部活動改革

「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 保健体育編 体育編」によると「運動部の活動は,スポーツに興味と関心をもつ同好の生徒が,スポーツを通して交流したり,より高い水準の技能や記録に挑戦したりする中で,スポーツの楽しさや喜びを味わい,豊かな学校生活を経験する活動であるとともに,体力の向上や健康の増進にも極めて効果的な活動である。」とされています。

中学・高校の運動部活動は、生徒が毎日通う学校の放課後や土日に行われ、日本の青少年のスポーツ活動において中核的な役割を果たしてきました。オリンピックなどの国際大会で活躍する日本の選手の中には、中学・高校時の運動部活動を経てトップ・アスリートとして活躍するようになった選手も数多く存在します。

その一方で、中学・高校の運動部活動は、近年、特に中学校の部活動顧問教員を務める教員の長時間勤務の一因ともなっていると指摘され、教員の働き方改革の一環として、部活動の見直しが進められてきました。中学校の部活動における全員顧問制、中学校の運動部活動の指導者の専門性の確保などの問題も指摘されてきました。

そして、文部科学省は、令和2年9月に「学校の働き方改革を踏まえた運動部活動改革」を策定し、改革の方向性として、部活動は必ずしも教師が担う必要のない業務であることを踏まえ、部活動改革の第一歩として、休日に 教科指導を行わないことと同様に、休日に教師が部活動の指導に携わる必要がない環境を構築する、部活動の指導を希望する教師は、引き続き休日に指導を行うことができる仕組みを構築する、生徒の活動機会を確保するため、休日における地域のスポーツ・文化活動を実施できる環境を整備することが示されました。

さらに、具体的な方策として、
Ⅰ.休日の部活動の段階的な地域移行(令和5年度以降、段階的に実施)
Ⅱ.合理的で効率的な部活動の推進
が掲げられ、

Ⅰの具体的内容として、
①休日の指導や大会への引率を担う地域人材の確保 (育成・マッチングまでの民間人材の活用の仕組みの構築、兼職兼業の仕組みの活用)
②保護者による費用負担、地方自治体による減免措置等と国による支援
③拠点校(地域)における実践研究の推進とその成果の全国展開
が示されました。

また、Ⅱについては、
①地域の実情を踏まえ、都市・過疎地域における他校との合同部活動の推進
②地理的制約を越えて、生徒・指導者間のコミュニケーションが可能となるICT活用の推進
③主に地方大会の在り方の整理(実態の把握、参加する大会の精選、大会参加資格の弾力化等)
が示されました。

(スポーツ庁「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革 概要」参照。)

そして、スポーツ庁は「生徒にとって望ましい持続可能な部活動と学校の働き方改革の実現に向けて全国各地域において、休日の部活動の段階的な地域移行や合同部活動等の推進に関する実践研究を実施し、研究成果を普及することで、休日の地域部活動や合理的で効率的な部活動の全国展開を図る」ために2021年1月に地域部活動推進事業の公募を行ないました。この事業では、全国47都道府県の2か所(市・町村)、20の政令指定都市各1か所の合計114か所の実施拠点が選定され、事業が行われています。

中学・高校の部活動改革は、まだ緒に就いたばかりですが、日本のスポーツ界の次代を担う青少年スポーツの中核的役割を果たしてきた、運動部活動の在り方を根本的に変革するものであることから、今後の動向を注視していくこととしたいと思います。